写真で相手の人の心を動かしたい
・人は何に動きを感じてワクワクするのか
・「動きのある写真」にはどんなメリットがあるか
・どうすれば「写真に動きを出す」ことができるのか
速い動きの一瞬をとらえるのではなく、見る人の心理に働きかけて、動きを感じさせるメリットとスキルについてこの記事では解説します。
【ワクワクする写真・動きのある写真】動きや躍動を写真に与えるには
写真に動きを出す秘訣と動きのある画面のメリットに迫ります。
動きのある写真の秘訣はまず斜線
斜線を設ける/斜線を見つける
斜線には以下のような作用があります
見る者の視線の静止を妨げて誘導する
画面の安定を崩し安心遠ざける
安定し過ぎて心苦しい画面をから解き放ち、気持ちを自由にする
動きのある写真の作用
写真に動きが出れば、画面に躍動感が生まれ、写真を見る人はワクワクしたりそわそわして、予感や期待感などを覚えます。写っている商品や人物に「触れたい」、「会いたい」、食べ物を「食べたい」と思う気持ちになるなど、相手の心を動かせる力が、動きのある写真にはあるのです。
写真に斜線が有効である根拠
人の心理は斜線に対してどのよう働くでしょうか?
安定した線に安心し、不安定な線に不安を覚える
Q&A
ピサの斜塔が良い例です。傾きで不安になる反面ワクワクするような魅力を感じるのは傾斜した縦線のためですね。
動きを感じる写真のメリット
Q&A
斜線は視線を導く役割もある
視線がたどる道すじとしての斜線
視線には斜線に沿って移動する性質もあります。「移動する」ということは画面から視線が離脱しない、すなわち、画面上の主題に関する情報をけ取ってもらう時間を設けることにつながります。
遠近法に用いられる斜線
遠近法との併用で見る人の視線を誘導出来れば、見る人の視線の滞在時間をさらに長くできます。
斜線で動きのある写真にするための手法
カメラを動かす
カメラの高さを変えて斜線の角度を調整
ベンチの斜線はカメラの位置によって画面上では傾斜角が変わります。
カメラを上げれば急角度に、下げれば水平に近くなります
ベンチの斜線は手紙を読み終わった人の心の動きや存在を暗示しています。
カメラを傾ける
撮影時にカメラを傾ける
カメラを傾けて通路を雨に濡れたデッキ渡る人の動作を連想させています。
撮影後に画面を傾ける
カメラを水平に構えて撮影された画像をPhotoshop(フォトショップ)のトリミング作業で傾け、ライダーの意気込みを表現しました。
この動作は、フォトショップでのトリミング作業を、バンディカムでPC画面キャプチャーしました。
高速シャッターでの斜線の効果
高速シャッターによる動作の切り取りは動きを連想させます。しかし斜線が存在して、ようやく動きを感じさせる写真になります。
斜線を見つける
ゴッホが生かした斜線
ゴッホの作品です。塀の中を歩く人たちの影が斜めに落ちて、おとなしい線が占める静の空間に動きを生んで生命感・人生観を出しています。撮影時にカメラを向ける先に斜線があれば「動きのある写真になる」と考えることができます。
斜線の活用で留意したいこと
斜線の活用で気を付けることや応用を伝えます。
水平線と垂直線
安心感を阻害しないように保つべき水平線や水直線は水平・垂直に保つ
中途半端に傾けるとワクワクする前に不安が先行して、心が動く前に不快に思われたり、引かれてしまいます。
垂直線や水平線と斜線の組み合わせ
垂直線や水平線を保ち、斜線(ここでは自転車のフレーム)と組み合わせると画面全体が安定して主題が引き立つ効果もあります。
斜線以外にも動きや空間の広がりを表せる「見切れ」
画面における「見切れ」とは、表示されるべきコンテンツの一部が、画面上に表示されないことを指します。
共に琳派の尾形光琳と俵屋宗達の『風神像雷神像』を見比べてみましょう。
尾形光琳
俵屋宗達
上が尾形光琳による風神雷神、下が俵屋宗達によります。
さてどちらがより動きを感じるでしょうか?
私見も含みますが下(俵屋宗達)の方が動きも迫力も感じます。
この理由が見切れです。左の雷神像を囲む太鼓を連ねた輪が画面からはみ出ており、
右の風神の風袋も見切れてさえいませんが今にもはみ出しそうです。
このことで画面の外にも連続した空間が広がり、動作の前後にはそちらにも居たりこれから移ったりする可能性を示唆して、動きが止まる可能性を否定しているようです。
動きを出せる「見切れ」の効果
見切れは画面の外にも空間があると感じさせるので動作の途中であると感じさせる
「見切れ」には複数の意味合いありますが画面構成や構図、デザインの観点での解説はこちらに詳しいです。
≫【永久保存版】ノンデザイナーがサクッと見栄え良いビジュアルをつくる、「余白」と「見切れ」の極意
まとめ
『動きのある写真』をテーマに、
・動きのある写真の鍵は画面上の斜線
・その根拠と効用
・動きが感じられる写真のメリット
・実際の活用方法
を解説しました。
ほとんどのカメラマンはシャッタースピードの加減で動きを止めたり、ぶらしたり、流し撮りをすれば写真に動きを感じさせられると言います。
しかし視覚心理の観点から考えると目を惹く線の傾斜こそが安心感、不安感に影響を持ち、相手の心を揺さぶるのです。
動きのある画面からは見る者の視線がすぐに離れず、その分伝えたい内容が相手に伝わるのです。