・意図したとおりに写真が伝わらない
・感じたことが写真に表れてくれなくて不満がのこる
・被写体から受けた感覚をどうしても写真で伝えたい
こんな不安や不満が消えて、
「伝えたい」思いが写真を通じて相手に届くといいですよね。
・すぐにシャッターを切らずに被写体から受けたイメージによって撮影するアプローチ
・ドイツのバウハウスの基礎教育で重視された、触覚でイメージを築く練習方法の解説
・視覚以外の感覚を通してイメージを持ち撮影に活かす意義やメリットの解説
バウハウス流・触覚でイメージを確立する手法
ドイツに創立された美術学校:バウハウスの基礎教育法に着目しました。撮影者の、持てる感性を最大限に生かしたイメージ形成の方法について、まず大まかな流れから、そしてそのメリットを解説します。
視覚のみに頼らず、被写体のイメージを確立する
イメージ確立って?
思いや考え、商品の質感やコンセプトなど、相手に被写体の本質が伝わる写真にするには被写体のイメージを撮影者が独自に思い描くステップが重要です。イメージを形成すには視覚のみではなく五感すべてを可能な限り活用します。
ともすれば撮影者は現場で、より速く、より正確に撮影することに迫られてイメージ形成のステップを取り入れるのは煩わしいことかもしれません。
「イメージ」の意味
英語の”image” は
《 像、象徴、画像、姿、概念、形象 》…と、幅広い意味を持つ言葉です。
この中から選ぶとすればで形象が近いでしょうか。
【形象:ある対象を観照(事物の実相を捉えること)したとき、その内的な姿として心に浮かぶ具体的なかたち、イメージ】(広辞苑)
実体としての被写体とは別に、撮影者自身が心に浮かぶ姿や形、性質や概念が「イメージ」だと考えると解りやすいでしょうか?
イメージ形成から撮影へのアプローチ
感覚が総動員されたイメージを撮影結果に反映させる
イメージを得る手法は次のトピックにて。ここでは撮影の流れで獲得したイメージを撮影に生かす方法について解説します。
- 対象に対して感じとって確立したイメージを撮影結果に反映させる心づもり
- そのイメージをゴールとして撮影する
- 撮影途上で感じたものも追加、そして修正してイメージを洗練させる
- 可能な限りイメージと撮影結果をイコールに出来たか確認
この流れをつかめると、精密すぎるほどのカメラに振り回されることなく、撮影者の感性が生かされたと言えるでしょう。「カメラが良いから」と思ったり、人に思われたりすることもありません。
この過程によって得られるメリット
- 被写体への理解がある
- 正確にわかりやすく伝えてくれる
- 魅力あるものとして伝えてくれる
- わかりにくい被写体でも上手に翻訳してくれる
触感でイメージ形成するバウハウスの練習方法
バウハウスとは? …その練習内容も見ていきましょう。
美術学校バウハウスの基礎教育
バウハウス
戦前のドイツ発祥の美術学校であるバウハウスでは視覚だけに頼らずに、触覚を対象のイメージ獲得に役だてる練習が基礎実習として採用されていました。
写真家でもあるラスロー・モホリ=ナギ
ラスロー・モホリ=ナギ
1937年にはシカゴでニューバウハウスを創設したモホリ=ナギの教育学に見られるものである。 ナギは芸術家であり、デザインを直感的な実践とみなしていた。 モホリ=ナギは、バウハウスのどの教授よりも、触覚の役割を特に強調し、彼のワークショップでは様々な触覚の練習を体系的に進めた。 Elif Aktaş Yanaş Ozyegin University Faculty of Architecture and Design, Istanbul, Turkey
視覚を制限しての練習
練習では目かくしによる触覚だけを頼って物質に触れ、その姿を想像します。
どのような練習?
触覚のイメージ化を写真に活かす
触感を撮影結果に反映させる流れを考えす。
触覚からの情報もイメージにインプットする
Q&A
視覚を補完する触覚
触ることで得られる感覚とは
触覚で得らる感覚にはどんなものがあるでしょうか?
可能なら、今すぐ目の前にあるものを目隠しで触れてみましょう。
いま触れたものからの情報量は、見ただけの時と比べてどうでしたか?
他の五感と知識も活用する
ペンフィールドのホムンクルス
ホムンクルス
身体の各部位の大きさは人が刺激を感じる能力の大きさに比例しています。
手が異様に大きく、眼は耳や鼻と同じか若干小さいですね。
…このようなこともホムンクルスから感じとれたでしょうか?
・手指や舌、唇が異常に大きい
・撮影に、触覚も活かしてイメージすることに意味がありそう
・触覚以外にも使える感覚がありそう
ホムンクルスからも触覚が情報収集の重要な担い手だと判ります。しかし触れることが出来ない場合、他の感覚も使って自分のイメージを作ることが重要です。
被写体のイメージ化に貢献する感覚
五感と感覚器官
視覚や触覚を含めた五感とそれぞれの感覚器官はこの通りです。
・視覚—–眼
・触覚—–手
・聴覚—–耳
・味覚—–舌
・嗅覚—–鼻
ルイジ・ギッリ著 ”写真講義から
カメラは人間の眼のようには感覚を自動修正しない機械に過ぎず、その厳密さで対象を捉えるのみです。ルイジ・ギッリ著 ”写真講義”
ここに記されている通り、カメラは人間の感覚や直感を持ちません。人間の感性で対象を捉え、撮影結果をそのイメージと等しくすることで、対象の視覚化(=写真)が成しえたと言えるでしょう。
時として五感以外に必要なもの=知識
知識のストック
触れることができない人物、味わえない食べ物などがあります。視覚以外の感覚の補完には知識が役立ちます。
「赤ちゃんの肌は柔らかくてすべすべしている」という知識があれば触れることも、匂いを嗅ぐこともなく、
この知識が作るイメージの通りになるようにライティングしたりや、お母さんの手を添えるなどの工夫が生まれます。
ただし直感や現場で得られるピュアな感覚や情報を知識が邪魔しないように、知識の引き出しは必要に応じて出し入れしましょう。
まとめ
対象のイメージを形成し、イメージを写真にするプロセスやメリット、バウハウスでの基礎教育の手法を題材に触覚をはじめとした、五感を生かして、知識で補完するイメージ化のプロセスやその重要性を解説しました。
被写体の本質を捉える、五感を用いたイメージ化の習慣は、その補助として知識を蓄積する習慣と合わせて撮影者を表現者に高めます。
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