・照明のコントロールで距離と光量の関係がうまくつかめない
・どの程度照明を移動するかの目安がなくてイライラする
・もっと思い通りにライティングできたら撮影がより早く進むのでは?
このようなもどかしさが解消するといいですよね
光源の距離と照らす明るさの関係には一定の法則があります。
照明をコントロールする人にとってこの法則は大きなアドバンテージです。
記事ではこのような疑問を解消します。
・光の減衰の法則とはどんな法則?
・光源を離すと暗くなるけど、照らされる方はどのよう暗くなっていく?
・照明をどれだけ近づけると、明るさが2倍になるのだろう
・光の性質を生かして商品撮影のライティングを自在にコントロールしたい
・ライティングにおいて基本中の基本である光源の距離と被写体の明るさ(照度)の関係【光の減衰の法則】
・この法則を体得するための図解と簡単な数式を体感的に理解するための解説
・光量を計測する機器の紹介
光源の距離と明るさの関係【光の減衰の法則】
光源が離れた割合の二乗分の一ずつ減衰する
光源が元の距離のX倍になれば被写体の明るさはXの二乗分の1になるという計算が成り立ちます。
距離の変化率の2乗分の1の照度になる ので 2倍遠ざかれば4分の1(1/2×2)、3倍遠ざかれば9分の1(1/3x3)の明るさとなる。
*減衰=次第に減少してゆくこと(広辞苑)
根拠の図解 / 太陽光(直射日光)について
光源から遠ざかるほど、光源が照らす範囲の広がりに連れて面が広がりエネルギーが分散する様子が下図からわかります。
光の減衰の図解
逆二乗の法則とも呼ばれます
被写体が照らされる明るさ(照度)は光源から2倍に離れると2の2乗分の1に、3倍になると3の2乗分の1になります。距離の二乗分の1ずつ減衰することから、「光の減衰の法則」は逆二乗の法則とも呼ばれます。
光の減衰の法則【計算式】
明るさ(照度)の変化率=1/距離の変化率の2乗
計算式を文章した例
- 被写体から光源までの距離を4倍にすると照度は1/16となる
- 被写体に光源を半分に近づけると照度は4倍になる
はるか遠くの光源|直射日光
太陽光はどこにいても距離の変化率が1となる
明るさ(照度)の変化率【1】=1/距離の変化率【1】の2乗
ライティングでの実践
光源を遠ざける/光源から遠ざかるとき
照度 | 距離の変化率 | 変化した照度 |
---|---|---|
1000 | 2倍 | 250 |
1000 | 0.5 | 4000 |
光源を近づける/光源に近づくとき
被写体を倍の明るさにしたい時、光源をどれだけ近づけると倍の明るさになるか?」など、実際の撮影現場で頻繁に考慮することなので、より実践的です。
元の照度 | 変化させたい照度 | 距離の変化率 |
---|---|---|
1000 | 2000 | 0.707 |
1000 | 500 | 1.414 |
距離を半分にすると4倍の明るさになってしまいます。
√2分の1(2の二乗根分の1)にするのが正解です。
正確な計算をできるより、光源を半分に近づけると明るさは2倍ではなく4倍になると感覚的に分かっているだけで十分です。
この肌感覚がスタジオや屋内で自由にライティングできる撮影現場では非常に役に立ちます。
ストロボなど発光量を調整できる照明装置は被写体に近づけたり遠ざけたりせずとも明るさを調整できますが、濃い影を生む硬い光の点光源や、影がぼやけて柔らかい光の面光源など光質をコントロールする際に距離と光の強さの関係は撮影結果に影響します。
明るさを計測できる機器
これまでの解説が机上の空論ではないかの確認もさることながら、演出や作業効率、健康の面で、明るさを正確にかつ客観的にとらえるのは重要です。
そこで明るさを計測できる機器二種類を紹介したいと思います。
映画やドラマ、舞台などの照明調整、作業や植物成育の環境設計の用途には光量計
光量計*(ルクス計とも呼びます)は、光の明るさや照度を測定するための機器です。
光量計の主な用途は以下の通りです。
- 照明設計: 光量計は、建物や部屋の照明設計において使用されます。照明の均一性や必要な照度レベルを測定し、適切な照明計画を策定するのに役立ちます。
- 労働安全衛生: 光量計は労働環境の安全性を評価するために使用されます。例えば、作業場や工場の作業スペースでの照度レベルを測定し、従業員の視覚環境が適切かどうかを確認します。
- 自然光の測定: 光量計は、自然光の照度を測定するのにも使用されます。農業や園芸などの分野では、植物の生育に適した照度レベルを調べるために光量計が活用されます。
- 映画や写真撮影: 映画や写真撮影においては、照明の調整が重要です。光量計は撮影現場で照度を測定し、適切な照明条件を確保するために使用されます。
- 防犯設備: 光量計は、セキュリティカメラや防犯システムの設置場所の照度を測定するために利用されます。暗い場所や明るすぎる場所を特定し、適切な監視環境を作るのに役立ちます。
いかに適用・応用範囲が広いかお分かりいただけますね
撮影用途には露出計
露出計はとんどのカメラに内蔵されており別途必要になる場面は少ないのですがプロには必携のアイテムです。露出計はスタジオや屋外でも自然光と照明装置のバランスや被写体に当たる光量を把握する以外に客観的な状況把握に活躍します。上記の光量形と原理は同様ですが、設定や表示数値の単位が異なります。光量形はルクスやルーメンであるのに対して露出計は計測時にレンズの絞り値やEV値が表示されます。
また露出計には大きく分類すると入射光式と反射光式があり、それぞれに定常光専用メーター*とフラッシュ光も計測可能なフラッシュメーター*があります。
*代表的な定常光専用メーターを見てみましょう >
*代表的なフラッシュメーターを見てみましょう >
入射光式
露出計に当たる光の強さを測るのが入射光式です。
入射光式と同様に代表的なメーカーとしてセコニックがあります。
入射光式露出計は屋内外ともに被写体のすぐそばに添えて、カメラに向けて計測します。
以下にAmazonにおける「入射光式露出計」の検索結果をご覧入れます。
反射光式
撮影対象被写体に当たる光の強さを計測するのが反射光式でスポットメーターとも呼ばれます。
スタジオや屋内では18パーセントグレー 板に露出計を向けて正確に計測します。
見える光と照らす光
当然と言えば当然ですが、本文で説明されてきた「明るさ」は、照らされる物体や物質の明るさについてであって、光源のそのものの明るさではありません。
たとえば真空や澄んだ空気を介して見える一定の光量を放つ光源はどんなに離れても同じ明るさに見えます。
この記事ではあくまでも光源と照らされる物質の距離と物質の明るさの関係と法則について書かれているということを今一度お心置きください。
光の減衰の法則:まとめ
被写体の明るさを光源の距離で変えるときの明るさの変わり方を解説しました。 たった一つのシンプルな法則に基づいたこの知識や感覚の有無で以下のことが期待できます。
- 撮影が速く進む ・微妙なライティングが可能になる
- 総じて写真のクオリティーが向上する
【photo+graphy = 光+描く】
光の減衰の知識は実践にも生かして思い通りの写真を実現して下さい。
このほかにも明暗のコントロールで奥行きや遠近を感じさせたり強調することもできます。
光の強さ以外に光の色についても興味がればこちらもチェックしてください。